電動バイクの免許区分と大型AT限定免許の上限撤廃

今までの電動バイクの免許区分

電動バイク1

近年の電動バイクの進歩は目を見張るものがあり、それに伴って自動二輪免許の改定を行うことが2019年7月22日に警視庁より発表されました。

法律の施工自体は2019年の12月1日より行われることになりますが、これまでの免許区分で乗ることができていたバイクの定格出力が変わってきますので、今後益々発展していく電動バイクに乗る際には免許の種類を確認しておかないといけなくなってきます。

今までは排気量何ccかによって分けられていた免許区分は、電動バイクが登場してきたことによって「定格出力」により区分されています。

この定格出力をきちんと把握したうえで、バイクを選ぶ必要もありますので知っておかないといけない知識となってくるでしょう。

原付免許は定格出力0.6kW以下

50cc未満の排気量であれば原動機付き自転車免許で乗ることができます。

そして、電動バイクになれば定格出力が0.6kW以下の出力のバイクに原付免許で乗ることができるようになっているのが今の免許区分です。

この免許区分については、法改正があったとしても変わることなく0.6kW以下の電動バイクは原付免許で引き続き乗ることができるようになっているようです。

原付のように小さいバイクであれば、そこまでの速度も出ませんし、そもそも法定速度が30km/hまでとなっていますので、あまり気にしなくてもいいのかもしれません。

ただ、バイクの登録区分によっては小型二輪免許が必要になってくることもあるかもしれませんので、バイクの登録区分には十分注意して乗らなければならないでしょう。

1kW以下は小型限定普通二輪免許

0.6kWを超えて、1kW以下の定格出力になると、小型限定普通二輪免許を持っていないと乗ることができなくなっています。

これは、排気量で言うと125cc未満のバイクということになり、原付二種とも呼ばれている登録区分になります。

2人乗りをすることはできますが、自動車専用道路などの高速道路を走ることはできないので一般道を移動するときに便利なバイクです。

1kWを超える出力は全て普通二輪免許があれば乗れた

2019年12月1日までであれば、1kWを越える定格出力のバイクであったとしても問題なく普通二輪免許があれば乗ることができます。

今までは電動バイクの性能もそこまで高性能なものではありませんでしたし、速度や加速も大型バイクに匹敵するようなバイクはありませんでした。

しかし、そこは技術の進歩によってどんどんと電動バイクの高性能化が行われてきており、今のままの免許区分では、その加速力などに対して車両の操作技術などが教育されていないということもあり、事故が起きてしまうことが懸念されています。

そのため、今までの免許区分のままでは乗ることができないようにする必要があり、大型バイクの免許が必要になってきます。

今後の免許区分はどうなる?

電動バイク オシャレ

法改正が2019年12月1日に行われれば、今まで乗れていた定格出力の一部分が変更になります。

原付や小型普通二輪免許で乗ることのできる範囲は変わらないので、小さい出力のバイクに関してはそこまで気にする必要のない改正です。

しかし、大きな定格出力となっているバイクに関しては重要な問題となりますので、今まで普通二輪免許で高出力の電動バイクに乗っていた人達は、新たに免許を取得したりするなどの対策が必要になってきます。

20.0kWを超える車両は大型二輪免許になる

大型二輪 電動バイク

法改正が行われて、変わってしまうのが20.0kWを超える定格出力の電動バイクです。

これまでは普通自動二輪の免許があれば乗れていた電動バイクの出力が制限され、1kWを越えて20.0kW以下の定格出力までの電動バイクしか乗ることができなくなってきます。

ここで気をつけておいて欲しいのが、メーカーが公表しているスペック値で、「定格出力」と「最高出力」の2つの種類の出力がある点です。

免許の区分では「定格出力」を基準に免許種類が分かれるようになっていますが、定格出力としては普通二輪免許で乗れる範囲であっても、最大出力は大型並みの出力を誇るような電動バイクもこれから販売されていく予定があります。

特にモーターの特性でゼロ発進からのトルクは、ガソリンエンジンよりも凄まじいことになっているので、大型バイクにも引けをとらないレベルの発進加速を味わうことができます。

だからこそ、普通自動二輪免許で乗れる範囲が限定されることになったのでしょう。

電動バイクの免許区分が見直されることになったきっかけは?

電動 スーパースポーツバイク

電動バイクの免許区分が見直されるきっかけは、はっきり言ってメーカーが張り切りすぎたことが要因ではないでしょうか。

モーターの加速力は内燃機関のようなグラフ線にはならず、内燃機関であればゼロ発進から緩やかに出力が上がっていく右肩上がりの曲線になります。

しかし、電動バイクに用いられるモーターの曲線はゼロから一気に最大出力まで上がり、一定の曲線となって出力が安定します。

むしろ、ゼロから発進するときが一番出力が高い状態になりますので、取扱いに注意しなければならないのが電動バイクです。

電動バイクの性能は、ガソリンエンジンの性能とはまた違っているので、乗りなれない人が事故を起こしてしまう前に免許区分を改定しておこうとした政府の判断があったのでしょう。

高性能電動バイクの登場により見直しが検討された

高性能電動バイクの例を挙げると、BMWからはCエボリューションという定格出力19.0kWの普通自動二輪免許で乗ることのできる電動バイクが登場しています。

しかし、定格出力が19.0kWになっているものの、最高出力は35.0kWと大型クラスの出力を発揮するようなものもあります。

35.0kWの出力は馬力で言えば48psですから、大体600ccクラスのミドルバイクと同じ程度の出力になります。

その他にもKTMCO(キムコ)からはスーパースポーツバイクとして電動バイクが発売される予定があるようで、パワーモードで走行すれば0-100km/hを2.9秒で到達してしまう程の性能があります。

0-100km/hを2.9秒というと、車であればマクラーレンやランボルギーニクラスの加速力ですから、その凄さが伝わってくるのではないでしょうか。

これだけの高性能電動バイクが登場してくる中で、免許をそのままにした状態で乗るというのは危険性が高いことを鑑みて、区分を改めて制定するに至ったのでしょう。

これまでの免許では大型AT限定免許は650cc未満までだった

大型自動二輪のMTが運転できる免許を持っている人にとっては気にすることでもないのですが、大型AT限定免許の人にとっては朗報が舞い込んできました。

これまでは、大型AT限定免許を所持している人は650cc未満のATに限るという大型自動二輪の条件が付いている状態での免許状態となっており、650ccを超える排気量になると乗ることができませんでした。

実際に、取得する人は少ない条件付の免許ではあったのですが、身体的な理由により限定免許になっている人もいたりしたのも事実としてあります。

私自身が教習所の指導員をしている時には、大型AT限定を取得に来た人はいませんでしたが、全国的にはある程度の人数はいたようです。

大型のビッグスクーターに乗りたいと思って取得する人や、事故や怪我、病気によってマニュアル操作が困難になった人にとっては、大型AT限定免許があることは救いでもあり、そして制約でもありました。

しかし、今回の2019年12月1日の法改正によって大型AT限定免許の排気量の上限がなくなり、1000ccでも2000ccでもAT車に限って乗ることができるようになります。

大型AT限定免許は当時の最大排気量に合わせて設定されていた

そもそも何故650cc未満までのATに限るということになっていたのでしょうか。

それは、大型のAT限定免許が制定された2005年にはAT車の最大排気量650ccのスズキ・スカイウェイブ650があり、それに乗ることができる免許として設定されていました。

しかし、その後の技術的な進歩によって650cc以上の排気量のエンジンを搭載するようなAT車が販売をしたり、DCT搭載のラインナップを備えた車種が登場するなどをして、時代にそぐわなくなってきました。

昔のままの免許の条件にしていると、今後乗ることのできるバイクが少なくなってしまい、AT限定の大型自動二輪免許の存在価値がなくなってしまう恐れがありました。

2005年の最大排気量が650ccだとしても、今では1200ccや1300ccのAT車もあることで、そういったバイクにも対応できる免許が必要となってきた背景があります。

大型AT限定免許の排気量上限がなくなればゴールドウィングにも乗れる!

ホンダ ゴールドウィング

さて、大型AT限定免許の排気量上限がなくなることによって乗ることのできる車両が幅広くなり、その選択肢にはホンダ・ゴールドウィングのような快適なツアラーに乗ることもできるようになります。

ゴールドウィングはマニュアル操作があるじゃないかと思っている人、実はDCT仕様車がラインナップされており、DCT仕様がラインナップされているのはゴールドウィングだけではありません。

ホンダのアフリカツインやNC750系もゴールドウィングと同じようにDCT仕様車があり、そういった車両にも乗ることができる選択肢が増えるのは、非常に嬉しいことでしょう。

1000ccオーバーの大型ATバイクやDCT仕様車に乗ることができるようになる

ゴールドウィングやアフリカツインのようなDCT仕様車に乗ることができるのはわかっていただけたかと思いますが、AT車の1000ccオーバーのバイクにも乗ることができる免許になります。

1000ccを超える排気量を持つオートマチック車になると、ヤマハのFJR1300ASなどがあります。

NM4などのバイクもあるように、AT限定免許だからと言って乗ることができなかったバイクに乗ることができるのは、非常に魅力的であると言えるでしょう。

これから大型AT限定免許を取る人はどうなる?

大型二輪 教習車

今、既に大型AT限定免許を持っている人の話は後述させていただくとして、まず先に2019年12月1日以降に大型AT限定免許を取ろうとする人はどうなるのでしょうか。

どうなるのか、というのは免許を取る際の車両や試験内容の変化についてになります。

まず、試験内容についてはこれまでに大型AT限定免許を取得する際に行われていた試験内容と変わりはないでしょう。

波状路や一本橋、スラロームやS字、クランク、急制動の試験課題。

そして、操作技術に対しての採点や法律を守って走行できているかの採点については今までと変わらないでしょう。

問題は、試験や教習・検定で使われる大型AT車が変わってしまうことです。

排気量700cc以上のAT車が教習車になるかも?

マニュアルバイクを運転することができる免許が大型自動二輪免許ですが、既に免許を持っている人はCB750やNC750に乗って教習を受けたり、試験を行ってきたのではないでしょうか。

大型免許になると排気量の上限がなくなるため、ミドルバイクでも比較的排気量の大きいバイクで700cc以上のバイクを使用しなければならない法律があります。

自動車学校などは、教習車を選ぶ時にそういった法律に則り車両を選定して購入しています。

大型自動二輪免許ではCB750やNC750を使用しているのに、大型AT限定自動二輪免許に関しては650ccでは車両の物的基準が満たされないものとして、教習に使うことができなくなったりする可能性があります。

そして、その場合はATの750ccを使用することになる可能性が大きくあり、可能性としてはNC750Sが教習車として使われる線が濃厚なのではないかと考察することができます。

どのみち、今のままの状態での試験や教習は行わなくなってくるのでしょうから、もし取るのであれば2019年12月1日までに免許を取っておく方が無難でしょう。

すでに大型AT限定免許を持っている人は?

すでに大型AT限定免許を持っている人については、恐らく上限がそのままなくなる形になります。

特別な手続きなどは必要ありませんし、試験なども必要ありません。

車の免許の場合であれば、中型免許が出来たときに、それまでに普通車の免許を持っていれば「中型車は8トンまでに限る」という条件がつきましたし、準中型免許が出来たときに、それまでに普通車の免許を取っていれば「準中型車は5トンまでに限る」という条件がついているかと思います。

しかしそういった条件がついているのは、下位免許の普通車免許を持っている場合であり、元々大型免許を持っている人にとっては関係の無いものでした。

今回の免許の改正は、車の免許とは違って新しく種類を追加するのではなく、条件を緩和することなので上記のような車の免許のときのように複雑になる心配はないでしょう。

単純に、元々大型AT限定免許を持っているのであれば、乗ることのできる排気量の上限がなくなると覚えてもらえれば大丈夫です。

免許区分の改定によっての今後の動き

DCT仕様車

電動バイクの定格出力によって区分される免許が普通二輪と大型二輪で分けられたり、大型AT限定の排気量上限がなくなったりしたことによって、バイク業界も動きを見せることになるでしょう。

普通二輪免許で乗ることのできる電動バイクを作りこんで出してきたり、大型のAT車やDCT車を排気量を考えずに作ることができるので、ますます競争は激化していくのではないでしょうか。

特に電動バイクに関しては、今後もさらに発展していく技術だと思いますので、乗ることのできるバイクが増えていくことと思います。

バイクに乗る人が増えれば、その分だけ楽しさを感じる人が増えていき、そしてその楽しさは回りにいる人までも巻き込んでバイクが日本になくてはならないものになってくれることを願っています。