先進運転システムをバイクにも採用!ADASでより安全で快適なライディング

四輪車の方では既存の技術となっている「先進運転支援システム」ですが、バイクにもいよいよ採用される運びとなりそうです。

先進運転支援システム」というものは、運転者をあくまでも補助的に事故を抑制または回避するための装置として普及しており、四輪車に乗っている方の中では現在所有している車に備わっているものもあるでしょう。

追突警報装置や車線逸脱警報装置を初めとして、オートクルーズコントロールなども運転支援システムの一部になります。

今回、バイクの方でも先進運転支援システムが登場することになりましたが、バイクでは四輪車にはない特性があり、その特性をいかにして支援していくのかが注目となるでしょう。

さて、バイクにしても四輪車にしても先進運転支援システムが取り付けられるようになるわけですが、この先進運転支援システムがどういった目的を持って取り付けられているのか、またどういった技術になるのかをご紹介しておきます。

先進運転支援システムとは?

先進運転支援システムは道路を運行するうえで、より安全かつ的確な行動をするために車両のシステムを自動で制御・運用するものとなっています。

これには、運転者への安全運転に対する警報から予告、限定的な運転の補助をするものとなっており、快適に運行することができるようになると共に、事故を回避するように作られています。

ADAS(Advanced driver assistance systems)=先進運転支援システム

なお、上記のように表記されることもあります。

ただし、バイクの場合であれば「ARAS(Advanced rider assistance systems)」となるでしょう。

身近でなおかつ有り触れている運転支援システムの中では、今ではほとんどの車に取り付けられているリアカメラがありますが、車をバックさせる際に安全確認をより的確に運転席にいながら行えるものとして取り付けられたものです。

車庫からのバックなどで車の後方に子供がいた場合に、気付かないで後退させてしまって死亡してしまう悲しい事故は、日本国内外でも多く発生しており、アメリカではこうした事故を回避するために2018年5月までに4.5トン以下の新車にリアカメラを取り付けることを義務付ける法律があるほどです。

この他にも、居眠り運転を防止するためにGM社が振動座席警告装置を取り付けたキャデラックを販売していたりもしており、高速道路の走行車線から逸脱すると座席が振動することによって運転手に危険を知らせてくれるようになっています。

先進運転支援システムが、日本では最近になって急激に知れ渡るようになってきていますが、事故を回避するための装置は利便性の向上という名目で普及してきていた事実があります。

このように、先進運転支援システムを取り付けることによって事故を減らし、なおかつ人為的なミスを可能な限りサポートして無くすことができるようになるのがこのADASの特徴となります。

先進運転支援システムの概要

先進運転支援システムの技術的な話は、様々なメディアでも取り上げられていたりするので、多くの方が知っている内容でもあるかもしれませんが、改めて確認してみましょう。

まず、車線や対向車などをコンピューターが認識するには、それらを認識するためのレーダーやカメラなどによって情報が必要になってきます。

正確な情報を取得して漏れなく処理することができなければ、技術としてなりたちませんし、運転者に対して誤報をしてしまう可能性もあります。

そこで、前方の状況を把握するための装置として、画像処理装置(カメラ)やミリ波レーダーなどを駆使して、複数の情報を取得することによって把握しています。

車に取り付けてある装置として、レーダーなどがありますが、その他にも他の車両からの情報やネットワークからの情報を取得することによってより正確で広い範囲の情報を取り入れることもあります。

この情報取得技術があればこそ、先進運転支援システムが安全に運用することができるということです。

バイクにADASを採用することの恩恵とは?

先進運転支援システムを四輪車でもバイクでも適用することによって、安全運転に繋がるという狙いがあり、事故を減少させることができるのではないか、減少させることができるとされて開発から採用にまで至りました。

バイクへと搭載することは、四輪車とは違った観点からのアプローチが必要になるのは想像に難しくないでしょうし、バイク特有の事故原因を主に制御する必要があります。

そのバイクの特性というのが、四輪車にはない「転倒」という事故です。

2つのタイヤによって支えられているのがバイクですから、走行中であれば直進性によって安定するようにキャスター角などの工夫で転倒しないようになっています。

しかしながら、ブレーキングやコーナリングなどの制動、バンクなどによって安定性が損なわれてしまったり、速度が減少することによって転倒の危険性も増してくるのがバイクです。

立ちゴケを経験されたことのある方もいらっしゃるでしょうし、私自身も立ちゴケをしてしまったことがあります。

それに、自動車学校での指導員時代では教習生のほとんどが、必ずといっていいほど転倒をしていました。

バイクの怖さでもあり、操ることのできる面白さでもあると思いますが、この特性が事故の原因になってしまうのでは危険性を注視している方からすれば見逃すことのできない問題点になります。

そして、今現在では先進運転支援システムとはまた違った形ではありますが、転倒しないようにするバイクの開発も進められているようですし、こうした技術がこれから販売されていくバイクに採用されていくのは遠くない未来に待ち構えているでしょう。

さて、今回の安全運転支援システムとしてバイクに採用された技術は以下のものになります。

  • アダプティブ・クルーズ・コントロール
  • 衝突予知警報
  • 死角検知

一つ一つのシステムについてご紹介していきましょう。

アダプティブ・クルーズ・コントロール

クルーズコントロールという話は冒頭の方でもしましたし、現在では多くの四輪車に採用されている技術になりますので、知っている方、使用されている方もいらっしゃるでしょうし、イメージもしやすいでしょう。

走行中に前を走っている車やバイクなどと安全な車間距離を保ちながら、自動で加速・減速を行うシステムになります。

このシステムを使うためには、もちろんセンサーやカメラなどの情報取得ツールが必要になってきますが、四輪車で採用されているミリ波レーダーなどを用いてバイクにも応用することができるようです。

高速道路などを走行する時に、ずっとスロットルを回していないといけない状態だと、手が疲れてきてしまいますし、一定の操作だけになると漫然な運転となってしまい、前走車との車間距離が近づいていても気付かないで走行してしまうこともあります。

気付いたときには、車が目の前にいて急ブレーキをしようものなら、安定性を失ってしまって事故となってしまう可能性もありますので、自動で加速・減速を行ってくれるシステムがあれば安心ですね。

衝突予知警報

事故の中でも多い割合で発生しているのが、「追突事故」になります。

追突事故が発生する原因として挙げられるのが、脇見運転やぼーっとしている漫然運転、運転操作の誤りなどがありますが、この中でも脇見運転や漫然運転での追突事故の発生が大多数を占めているのが現状となります。

そこで、前を走っている車との距離をレーダーやカメラなどによって検知することで、車間距離が追突する危険性がある領域まで接近した場合に、ライダーに対して音や光といった聴覚・視覚的なものによって警報するシステムになります。

この衝突予知警報が付くことによって、追突事故を減らすことができます。

死角検知

ライダーにとっても四輪のドライバーにとっても、視覚情報というものは大変重要な情報となります。

しかしながら、街中でも郊外でも、走行をしている時に相手が見えなかったり、こちらから見えなくなっていたりする「死角」と呼ばれる盲目の箇所があります。

特に、2車線以上の多車線の場所を走行している時に、車線変更をしようとしてミラーのみでの確認だと不十分とされるのはライダーであれば実感として知っていることでもありますし、自動車学校の教習でも必ず習う項目となっています。

ただ、現在の交通事情から考えてみると死角部分があることを知ってはいても、運転操作に慣れてきてしまってミラーのみで確認をしてしまうライダーが少なからずいることも、見過ごすことのできない現実でしょう。

そして、死角検知システムがあることによって、ライダーからは見えづらい位置に走行している車両がいた場合にミラーにアイコンを表示させるなどをして知らせてくれるようになりますので、ミラーでの確認で死角部分をある程度は補うことができます。

ライダーの乗っているバイクは、四輪車に比べるとミラーに映る範囲は少ないですし、ヘルメットを被っている特性状、見えづらい範囲がどうしても多くなってしまいますので、こうしたシステムがあることで事故を低減させることができるのではないでしょうか。

ADASをバイクに採用したのは何故か?

今更になってバイクにADASを採用しているのは、技術的な問題からセンサーなどの情報取得機器を適応させることができなかったことにあります。

しかし、技術的な問題が解決することができた現在では様々なテストが行われながら実用化に向けて各社動いているようです。

そして、先進運転支援システムは四輪車よりもバイクの方に採用しなければならない大きな問題点があり、その問題点を現実として直視しながらライダーはより安全運転に努めていかないといけません。

安定性の話を先にしていますが、四輪車と二輪車では転倒するリスクが段違いであります。

転倒することによって、事故となり、負傷してしまったり最悪の場合は亡くなってしまう方もいらっしゃいます。

バイクは四輪車に比べると交通死亡事故者数が、約13倍も高いという統計結果も出ていることからも、ADASをバイクにこそ採用しなければならないでしょう。

交通事故による死者数が多くなってしまう原因には、転倒という不安要素だけでなく、日本特有の道路事情にもあります。

日本は、国外に比べると道路幅が狭いですし、山の中を通るトンネルや、入り組んだカーブ遮蔽物の多い街中などがあり、こうした道路の特徴によってライダーの運転がより高度なものにならなければならないですし、こういった道路はADASのレーダーやセンサーの誤作動も起こしかねませんので、より精密な情報取得や選別をするシステムを構築しなければなりません。

バイクに乗るライダーの死者数が少なくなるようにするためにもADASは必要です。

また、日本の道路で最適に活用することのできる技術を搭載するためにも、満を持しての登場となりました。

ADASを採用するバイクメーカーは?

先進運転支援システム(ADAS)を採用する動きが活発だったり、安全に関する事項に積極的に取り掛かっているのはヨーロッパを初めとした世界各国にあるメーカーです。

Ducati(ドゥカティ)KTMといった海外メーカーはすでに、日本での公道試験を行っており2020年からは新車のバイクに搭載される予定になっています。

また、日本国内メーカーでもカワサキ重工2021年の実用化に向けて開発・試験を行っており、カワサキを皮切りとして日本国内でもADASを搭載したバイクが続々と販売されることになるでしょう。

ADASを搭載したバイクの開発に着手しているメーカーは多数ありますが、公表しているカワサキなどのデータを他社と共有したりすることによって、より安全で快適なライディングができるシステムへと変貌を遂げる可能性もあります。

インターネットクラウドによる情報共有もありますが、開発時に使用されたりするデータも一部分だけでもライダーのためになるのであれば、共有して製作されるもの有りではないのでしょうか。

ところで、自らがバイクの様々な運動性能などを解析したいと思えば、シュミレーションソフトを手に入れることもできます。

運転条件から、路面環境まで細かく設定することで、様々な条件下でのバイクの動きを把握することができますので、こういったシュミレーションソフトを使用してADASの性能を評価したりしているのかもしれません。

バイクが危ない乗り物と呼ばれる時代は終わる

一昔前の人達からすると、バイクに乗っている人というのは「不良」というイメージが付いてしまい、バイクに乗っている人は怖い・危ないといったイメージを持っている人が多くいます。

そして、バイク自体が危ないと思われてしまい、バイクに乗りたいと思っている子供がいたとしても親の反対によって乗ることができないといったことも少なくありません。

現に私の学生時代は、学校や社会の風土からバイクの免許を取ることさえも許してもらえませんでしたし、親からも反対されていました。

こっそりと原付の免許だけを取得して50ccのバイクに乗っていましたが、その時代があったからこそバイクは危ない乗り物ではなく、楽しいものだと私は皆さんに伝えたいです。

確かに四輪車と違って転倒してしまうリスクはありますが、そういったリスクを負わないで乗れるものは“ない”と私は断言します。

自動車学校の指導員をしていたからこそ、四輪にしても二輪にしても危険性を十分に理解して、生徒に教えていました。

バイクも四輪車もどちらも、自分が怪我をすることもあるし、人を傷つけることもあります。

バイクは転倒してしまうから危ないと主張するのであれば、自転車はいいのでしょうか?

自転車はスピードが出ないから大丈夫と言うのであれば、原付バイクよりもスピードの出る自転車はいいのでしょうか?

危ないというイメージだけでバイクに乗ることを反対されてしまったりしますが、危ないものは世の中に有り触れていますし、危ないものだからこそ取扱いを十分に理解して、使用しなければなりません。

そして、ヒューマンエラーによって発生してしまうようなミスを補助するために、今回のような「先進運転支援システム」が搭載されたバイクが登場してきます。

事故のリスクを背負いながらバイクに乗るのは当たり前ですし、免許証というのは責任を負うという意思表明でもあります。

十分に運転技術があり、安全意識のある人だとしても事故はいつ起こるかわかりません。

だからこそ、「先進運転支援システム」が採用されるバイクは、今後のバイクに乗りたい若者たちを含めたバイク好きの人の後押しにもなってくれるのではないかと思っています。

昔と比べると、バイクという存在のイメージ改革がYoutuberなどによって行われて、楽しいものだということが周知されていっていますが、それでも万が一事故が起こったときの怖さを、危険性を危惧している人の方が大多数になります。

それでも、多くのバイクに乗りたい人達にとってバイクがかけがえのない存在であるからこそ、社会からバイクは怖い乗り物ではないと思ってもらえる技術は喜んで受け入れるべきものでしょう。